倒産企業分析

釜屋化学工業株式会社が民事再生法を申請 07/05/24

 報道によると「コスト高や経費負担から収益性が悪化していたため、財務リストラクチャリングを行っていたが、原油価格の高騰による大幅なコスト増、また、価格競争によって収益が圧迫されるなど経営環境が悪化。
 総額7億円の第三者割当増資による資金調達を画策していたが、株主総会において否決され自力での再建を断念した」という。

  倒産の原因は何でしょうか?収益の悪化が一番の原因でしょうか?
  2005年3月期に約16億円の特別損失を計上しております。
この特別損失は、どのような内容でしょうか?
2004年3月期に比べ、2005年3月期は棚卸資産回転期間、売上債権回転期間が改善しており、また、2004年3月期と2006年3月期の売掛金を比較すると2006年3月期の方が売上は多いにもかかわらず売掛金が2004年3月期より少ない。
以上のようなことから、この特別損失は不良債権と不良棚卸資産を処理した可能性があると思われます。
倒産理由が報道では「コスト高による収益性の悪化のため」としておりますが、経常利益をみてみると過去3年間黒字であり、必ずしも収益性が悪化しているとは言えないのではないでしょうか。
報道の倒産理由が正しいとするなら2005年3月期に処理したと思われる債権は粉飾計上したものを処分した可能性が高く、粉飾決算を行っていたのではないかという疑念が浮かび上がってきます。
以上のことから、本来は収益が悪化していたにもかかわらず粉飾決算によって収益性の悪化を隠していた可能性が高いことが倒産した理由の一番の原因ではないでしょうか。

  それでは、どこに倒産の兆候が表れているのでしょうか?
以下の項目に倒産の兆候が表れていたのではないかと考えることができるのではないでしょうか。
@非常に低い当座比率(約50%以下)
A割引手形の存在
B長期借入金増加、短期借入金減少
C投資有価証券の大幅な増加

@、A、Bからは、資金繰りが非常にタイトであったのではないかと判断することができ、@のためにAとBの現象が起こったと考えられます。
Bは、短期借入金が返済できないために長期借入を行い、それを返済原資に充てたのではないかと考えることができます。
Cは、日常資金繰りがタイトである可能性が高いという状態を考慮すると、投資有価証券を購入する余裕がないのではないかと思われます。
それでは、この投資有価証券の増加は何でしょうか?おそらく売上債権を株式で回収したのではないかと考えることができるのではないでしょうか。

 異常値を表している財務指標(特に当座比率等)・財務諸表項目をチェックすることが、倒産の影響を回避する有効な手段の一つとなります。